5類移行後、飲食店のインバウンド対策状況は?ベジタリアン・ヴィーガン対応は1割未満
本調査について
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:370
調査期間:2023年9月13日~2023年9月28日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち68.9%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は54.3%(首都圏の飲食店の割合は69%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
調査結果について
2023年5月以降、58.9%の飲食店にインバウンド顧客が来店
日本では、5月8日より新型コロナウイルスの分類が5類へと引き下げられました。業態によって差はあるものの、飲食店の売上は全体的にコロナ禍前の水準へ戻りつつあり、ここ数年大きく落ち込んでいたインバウンド需要の回復にも期待が寄せられています。そこで今回は、飲食店におけるインバウンドの状況を調査するため、アンケートを実施しました。
はじめに、新型コロナウイルスが5類に移行した後(2023年5月8日以降)、インバウンド顧客が来店したか尋ねたところ、58.9%の店舗で外国人観光客が「来店した」ことがわかりました。
続いて、インバウンド顧客が「来店した」と回答した方に、コロナ禍前のインバウンド顧客の来店頻度について答えてもらいました。すると、54.6%が「週に1回以上来店していた」(ほぼ毎日=15.6%、週に2~3回程度=21.6%、週1回程度=17.4%)と回答。5類移行後にインバウンド顧客が来店した店舗の半数以上は、コロナ禍以前からインバウンド顧客がコンスタントに来店する店舗だったことがわかります。
さらに、インバウンド顧客が「来店した」と回答とした方に、海外からのお客様がどのメディアで貴店を見つけ、来店しているかを尋ねたところ、半数以上の店舗が「何のメディアを見ているかわからない」と回答。一方で、メディアを把握している店舗の回答を見ると、「Instagram(14.7%)」や、「トリップアドバイザー(9.2%)」のほか、「その他(18.8%)」の意見として、「Google」などを挙げる声が目立ちました。
「外国語対応」に苦悩する店舗が多数
次に、インバウンド顧客が「来店した」と回答とした方に、海外からのお客様が最も注文するメニューを教えてもらったところ、多くの店舗から日本らしいメニューが挙がる結果となりました。具体的には、「日本酒」や「生ビール」、「ジャパニーズウイスキー」といった酒類のほか、「ラーメン」や「刺身」、「唐揚げ」、「和牛を使用した料理」などが複数の店舗から挙がりました。
また、インバウンド顧客が「来店した」と回答とした方に、海外からのお客様に対し、困っていることについて尋ねたところ、「言葉の壁」の問題を筆頭に、各店さまざまな悩みを抱えている様子が垣間見えました。
言語の違いがある中での接客
・外国語対応メニューを用意していないので、説明が難しく、時間も掛かる(愛知県/焼肉/1店舗)
・(インバウンド顧客が)日本語を理解できないため、専門的な内容のやりとりに時間が掛かる(部位や食感の違いなど)(新潟県/洋食/1店舗)
・英語が話せるスタッフがいない(神奈川県/専門料理/2店舗)
文化の違いそのもの
・お通しの文化を理解していない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・「席に案内してもらう」という経験をしていないため、勝手に入って勝手に席に座る(東京都/アジア料理/2店舗)
食材制限がある方への対応
・宗教上の関係で、出汁に何の肉が入っているのか、どのように食肉処理を行った食材なのかなど、提供までの過程について詳しい説明が求められる場合の対応(東京都/焼肉/3~5店舗)
・食材制限が多い場合、オーダーから調理まで時間がかかる(愛知県/イタリア料理/1店舗)
その他
・トイレの使用方法。非常に不衛生な使用が目立つ(大阪府/その他/101店舗以上)
・食べ残しが多い、予約時間に来ない(石川県/その他/1店舗)
・勝手に持ち込みをして食べる(東京都/イタリア料理/51~100店舗)
最もインバウンド対策につながると思うのは「観光情報媒体への掲載」
続いて、インバウンド対応策の実施状況について尋ねたところ、「実施している」対策として最も多かったのは、「WiFiの導入」で50.8%。続く、「モバイル決済・クレカ対応範囲の拡大(銀聯やアリペイ、WeChatPayなど)」も43.2%の店舗で実施されています。
一方で、インバウンド顧客向けの集客や外国語対応、メニュー開発などに関する対応策については、それぞれ1割~2割が実施に前向きな姿勢を見せているものの、実際に対応している店舗は限られているのが現状。特に、「インバウンド顧客向けのコース設定・メニュー開発」と「ベジタリアン・ヴィーガン等への対応」については、実施している店舗が1割未満な上、77.0%もの店舗が「未実施で今後も実施予定はない」と回答しています。やはり、食材や調理方法に関わる対策の実施は、さまざまな面でハードルが高いようです。
さらに、インバウンド対策を「実施している」もしくは「検討している」と回答した方に、最もインバウンド対策につながると思う施策は何か尋ねたところ、「インバウンド顧客向けの観光情報媒体掲載」との回答が27.3%で最多に。次いで、「インバウンド顧客向けのSNS発信(20.2%)」、「多言語・写真付きメニュー(テーブルオーダー端末含む)の導入(18.9%)」との回答が続きました。
また、何故その施策を選んだのか質問したところ、各店からさまざまな理由が寄せられました。
▼「インバウンド顧客向けの観光情報媒体掲載」を選んだ理由
掲載情報を参考に来店する人が多いと感じるから
・店舗選択の際に一番参考にしているため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/31~50店舗)
・何かしらの情報を見て来店される方が多いため(東京都/フランス料理/1店舗)
認知拡大を重要視するため
・まずは周知されないと選ばれないから、露出を増やすしかない(沖縄県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・知ってもらわないと来店につながらないため(奈良県/カフェ/1店舗)
身近な成功事例があるから
・以前の系列店でトリップアドバイザーに掲載したところ、コンスタントにインバウンド客が来店していたので(東京都/カラオケ・パブ・スナック/3~5店舗)
・近隣にその方策で成功している店舗がある(埼玉県/洋食/1店舗)
▼「インバウンド顧客向けのSNS発信」を選んだ理由
SNS情報を参考に来店する人が多いと感じるから
・海外の方が、以前来たとき、SNSの写真で来店を決めたと仰っていたので(神奈川県/バー/1店舗)
・ほぼSNSを見て、ご来店されているから(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)
SNSユーザー数が多いため
・Instagram、X、Facebookは世界中で見られている(千葉県/専門料理/1店舗)
・世界中どこでも各国で検索してもらえ、渡航前に知ってもらえるから(東京都/テイクアウト/2店舗)
▼「多言語・写真付きメニュー(テーブルオーダー端末含む)の導入」を選んだ理由
外国語が話せなくてもオーダーテイクが可能になるから
・英語が喋れないスタッフがいるときでも指差しで対応できるため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・言葉が通じなくても、オーダーが取れるから(福岡県/イタリア料理/2店舗)
サービスの向上につながるから
・商品説明がスムーズにいくことで(食欲充足)、サービスに対して好印象を抱かれやすい。結果、口コミ評価・SNSアップにつながり、それをご覧になられた方々の来店につながるのでは、と考えます(広島県/カフェ/6~10店舗)
・外国人の方にも、自店の多くのメニューの中から好みのものを選んで召し上がっていただきたいから(愛知県/カフェ/1店舗)
エリアによっては、インバウンド集客にあまり積極的ではない店舗も
また、インバウンド顧客が「来店していない(わからない)」と回答した方に、海外からのお客様を積極的に獲得したいか質問したところ、最も多かったのは、「特にインバウンド顧客を意識していない(国内顧客と同様に考えている)」との回答で60.5%。「できれば、インバウンド顧客は避けたい」との回答も32.2%見られるなど、インバウンド顧客が来店していない店舗は、海外のお客様の獲得にはあまり積極的でない様子がわかります。
そこで、その理由について尋ねたところ、さまざまな意見が寄せられました。下記にその一部を紹介します。
▼「特にインバウンド顧客を意識していない」を選んだ理由
そもそも外国人観光客が来ない地域だから
・地区的に、外国人はこない(大阪府/テイクアウト/1店舗)
・土地柄、観光地でもないため特にインバウンドは視野に入れてない(神奈川県/カフェ/1店舗)
海外のお客様をターゲットにしていないから
・元々地元客が多い営業形態であるため(千葉県/和食/2店舗)
・ベットタウンだから地域のお客様を第一に考えている(東京都/その他/1店舗)
その他
・既に国際化しているため(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・扱っているものが、和風よりではないので(神奈川県/バー/1店舗)
・インバウンドに限らずだが、一つの事例(潮流)に偏りすぎると何かあったときに取り返しがつかなくなるため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
▼「できれば、インバウンド顧客は避けたい」を選んだ理由
外国語対応が難しいから
・外国語が話せるスタッフもいないため(東京都/その他/2店舗)
・多言語に対応するのは難しいから(埼玉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
常連客を大切にしたいから
・長く通ってくれている常連客の席確保(東京都/和食/1店舗)
・客層が変わって常連さんが離れるため(東京都/フランス料理/1店舗)
その他
・トラブルの元になりそうだから(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・売上の面で言えば、日本人の集客だけで充分だから。あえてさまざまな追加の対策、新たな対応をしなければいけないインバウンド客は必要としていない(東京都/バー/1店舗)
■調査結果の引用時のお願い
本調査結果の引用時には、以下のご対応をお願い申し上げます。
・クレジットに、「飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ」と明記ください。
・WEB上で引用いただく際には、「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)へのリンク付与をお願いいたします。
本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。
株式会社シンクロ・フード 広報:今西 大木
住所:東京都渋谷区恵比寿南一丁目7番8号 恵比寿サウスワン3階
TEL:03-5768-9522 Mail:public-relations@synchro-food.co.jp
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