飲食店のバックヤード業務、最も労力のかかる作業は?DX実施は2割の現状も
本調査について
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:342
調査期間:2023年8月1日~2023年8月8日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち69%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は52.6%(首都圏の飲食店の割合は68.4%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
調査結果について
工数のかかるバックヤード業務、最多は「在庫管理と発注・仕入れ」
飲食店スタッフの仕事には、接客やオーダーテイク、配膳などのほか、食材の仕入れ、在庫管理、売上管理など、客席以外のスペース(バックヤード)で行う業務が数多くあります。そこで今回は、飲食店におけるバックヤード業務の現状について調査するため、アンケートを実施しました。
はじめに、バックヤードで行う一か月の業務において、最も工数(人員×時間)のかかる作業を答えてもらったところ、「食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ」が29.2%で最多になりました。次いで、「売上額の記録・集計・分析(17.8%)」、「新メニューの検討・開発(16.4%)」との回答が続きます。全体を見ると、食材の管理や仕入れ、メニュー開発といった、料理に関わる作業に工数を割かれる店舗が多いようです。
さらに、前問で回答した作業を主に実施している人は誰か尋ねると、64.9%が「店長・統括マネージャー」と回答しており、店長クラスの従業員にかかる負担の大きさが垣間見えます。
続いて、回答したバックヤード業務について、工数がかかる具体的な理由を答えてもらいました。すると、作業ごとにさまざまな要因があることがわかりました。
<食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ>
理由1:自分の足で食材を仕入れているから・市場まで仕入れに行く(東京都/その他/1店舗)
・仕入れのほとんどが配達ではないため(長野県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
理由2:棚卸に時間を要するから
・毎月末の棚卸で扱っている品目が多く、すべての食材を料理長を中心にスタッフがみんなで棚卸しているから(愛知県/和食/1店舗)
・保管冷蔵庫の数が多いので棚卸に時間がかかる(兵庫県/専門料理/11~30店舗)
理由3:取り扱う食材の種類が多いから
・デリバリーを始めたので、取り扱う食材・備品などが格段に増えた(東京都/バー/1店舗)
・メニュー数が多いため食材の種類も比例する(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
<売上額の記録・集計・分析>
理由1:手作業で売上をまとめているから・POSレジでないため、集計、記録等は手作業(大阪府/その他/101店舗以上)
・手入力しているため(神奈川県/カフェ/1店舗)
理由2:一人で作業を行っているから
・すべての事務作業を個人でやっているため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・ワンオペのため(東京都/その他/1店舗)
<新メニューの検討・開発>
理由1:試行錯誤を重ねる必要があるから・配合を細かく変えた複数のレシピを試作して比較試飲するため(大阪府/カフェ/1店舗)
・何度も試作を重ねるから(沖縄県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
理由2:アイデア出しの時間を要するから
・悩む時間が多いため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・新作が思いつかない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
売上や在庫の管理でDX化が進むも、半数近くの店舗はシステム導入に消極的
続いて、バックヤード業務を効率化するために、システムやサービスを導入した経験があるか尋ねたところ、48.0%が「現在活用しておらず、今後導入する予定もない」と回答。半数近くの飲食店がシステム等による効率化に消極的な姿勢を見せています。一方で、21.3%はシステム等の導入経験が「ある」と回答。「現在は活用していないが、今後導入する予定」との回答も11.7%見られるなど、システム等の導入に前向きな店舗も少なからず見られます。
システム等の導入経験が「ある」、「現在は活用していないが、今後導入する予定」と回答した方に、具体的にどのような作業に導入したのか(またはする予定なのか)質問しました。すると、最も多かったのは「売上額の記録・集計・分析」との回答で46.9%。次いで、「食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ(38.9%)」、「従業員の勤怠管理から給与支払いの手続きまで(31.0%)」、「お客様の予約確認と管理(27.4%)」との回答が続きました。
さらに、具体的にどのようなツールやサービスを導入しているのか(または導入予定なのか)答えてもらったところ、各店からさまざまな回答が寄せられました。以下、挙げられたツール・サービス名を、目的の作業ごとにピックアップしてご紹介します。
<売上管理>
Airレジ(エアレジ)・スマレジ・弥生会計 など
<発注管理>
CO-NECT(コネクト)・クロスオーダー・TANOMU(タノム) など
<勤怠・シフト管理>
ジョブカン・Airシフト(エアシフト)・らくしふ など
<予約管理>
トレタ・テーブルチェック・レストランボード など
システム導入によるバックヤード業務の効率化、5割が作業工数減
次に、システム等を導入した経験が「ある」と回答した方に、導入したツールやサービスの決め手になったポイントを尋ねたところ、最も多かったのは「ランニングコストの安さ(63.0%)」との回答でした。次いで、「操作性、使い勝手が良さそうだと感じた(52.1%)」、「初期費用の安さ(47.9%)」、「機能性の高さ、充実度(39.7%)」と続きます。全体を見ると、機能性よりもランニングコストや初期費用といった費用面を気にしている店舗の方が多いことがわかりました。
さらに、ツールやサービスを導入した際の効果について尋ねた質問では、56.2%もの人が「作業工数が減った(56.2%)」と回答。さらに、「作業工数は変わらないが、進めやすくなった」との回答も31.5%あり、9割近くの店舗がツールやサービスの導入により、何らかのメリットを実感しています。
また、導入したツール等にかかっている月額費用について尋ねると、最も多かったのは「1万円未満」との回答で42.5%。続く、回答も「1~5万円(32.9%)」となっており、5万円以内との回答が7割を占めています。
続いて、システム等を導入した経験について「現在は活用していないが、今後導入する予定」と回答した方に、導入する際のおおよその月額予算を答えてもらいました。すると、「1万円未満」が45.0%、「1~5万円」が37.5%と続き、8割を超える人が「5万円以内」の金額を想定していることがわかります。
最後に、バックヤード業務に限らず、現状の課題や悩みについて尋ねたところ、人材不足や長引くコロナ禍の影響など、各店さまざまな課題に直面していることが明らかとなりました。以下では、その一部をご紹介します。
深刻な人材不足
・客数が増えているにも関わらず、人員を増やすことができず、チャンスロスが起きている点(神奈川県/カフェ/6~10店舗)
・従業員が今年に入って急激に採用が難しくなった(愛知県/カフェ/2店舗)
・人員の不足に対し補充が出来ていない。また募集を出しても応募が来ない状況(神奈川県/その他/31~50店舗)
コロナ禍からの回復の遅れ
・売上の戻りがコロナ前に戻らないことです(埼玉県/中華/1店舗)
・売上や客数がコロナ前の水準まで戻らない(東京都/その他/6~10店舗)
食材やエネルギー価格の上昇
・食材、エネルギー費の高騰(大阪府/イタリア料理/1店舗)
・原材料費の値上がりが続き、価格設定に頭を悩ませています(大阪府/カフェ/1店舗)
シフト管理の難しさ
・アルバイトのシフト管理。学生は夏休みと冬休みに集中しがちで調整しにくい(東京都/カフェ/2店舗)
・人員の確保です。一週間ごとのフリーシフト制を設けているため、足りない週であったり、逆に多すぎることも出てくるため、今後きちんと考えていきたいです(東京都/バー/1店舗)
■調査結果の引用時のお願い
本調査結果の引用時には、以下のご対応をお願い申し上げます。
・クレジットに、「飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ」と明記ください。
・WEB上で引用いただく際には、「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)へのリンク付与をお願いいたします。
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株式会社シンクロ・フード 広報:今西 大木
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