Z世代の従業員を雇用した飲食店の8割が世代間ギャップを実感。「缶切りの使い方を知らなかった」
本調査について
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:360
調査期間:2023年4月27日~2023年5月9日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち70%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は51.4%(首都圏の飲食店の割合は67.3%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
調査結果について
「学業・プライベート優先」の働き方を望むZ世代が多数
飲食店で近年活躍し始めているのが、「Z世代」(1996年~2012年生まれ ※以下同じ)と呼ばれる若い世代です。現在10代~20代であるZ世代の従業員は、人手不足が深刻化する飲食業界にとって頼もしい存在に他なりません。そこで今回は、飲食店におけるZ世代の従業員との関わり方や、今後彼らに期待することなどを調査するため、アンケートを実施しました。
はじめに、Z世代の従業員の在籍状況を尋ねたところ、「在籍している」が53.3%、「現在は在籍していないが、過去に在籍していた」が22.8%となり、76.1%の店舗でZ世代が働いていたことが明らかとなりました。
続いて、「Z世代の従業員の在籍歴がある」(「在籍している」、「現在は在籍していないが、過去に在籍していた」)と回答した方に、シフト制の勤務形態をとるZ世代の従業員において、どのような働き方を望んでいる人が多いか答えてもらいました。すると、最も多かったのが「学業やプライベートを優先させた働き方がいい」との回答で50.7%。続く回答も「週1~2日程度の勤務(37.2%)」、「週3~4日程度の勤務(25.9%)」と、勤務日数が少ない働き方を希望する従業員が多いことがわかりました。
また、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員がいることをきっかけに、自店舗の既存の慣習やシステムを変えた経験があるか質問したところ、7割以上が「ない(75.9%)」と回答。「ある」と回答したのは、24.1%の店舗にとどまりました。
そこで、自店舗の既存の慣習やシステムを変えた経験が「ある」と回答した方に、具体的に何を変えたのか、また変えたことによってどのような効果があったか教えてもらったところ、さまざまな声が寄せられました。
従業員との連絡や情報共有にチャットツールを導入
・社内チャットツールを使ったやり方に変えて、電話ではつながりづらかったメンバーとも連絡が取りやすくなった。メンバーとの情報共有が素早くできるようになった(神奈川県/カフェ/1店舗)
・シフト確認ミスや情報漏れがないように、グループLINEで周知徹底。また大型の宴会による増員対応にもこのツールが一役買っている(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・これまでエクセルと希望用紙を使用してシフトを組んでいたが、LINEを活用するかたちに仕組み自体を変更。結果、シフトのアンマッチやミスがかなり減った(神奈川県/焼肉/11~30店舗)
従業員の希望に沿ったシフト組みを実施
・シフトを契約シフトから希望シフトへ変更。シフト数は時期により減ったが退職者数は減少した(神奈川県/焼肉/11~30店舗)
・基本的に曜日固定でシフトを組んでいたが、本人の希望に沿って柔軟にシフトを組むようにしている(東京都/フランス料理/2店舗)
・シフトの調整を本人の意思優先にして離職を防いだ(神奈川県/アジア料理/3~5店舗)
成果に対する評価や昇給の判断基準を明確化
・(仕事の)覚えは早いが、次のシフトでは直ぐに忘れてしまうので個人成果型にした。定期的に業務に関する知識小テストを実施。クリアできた場合の報酬は時給に反映した。覚えない人は覚えないので、評価の判断基準になった(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・昇給に関して、どのようにすれば昇給に値するか明確にした(大阪府/イタリア料理/1店舗)
その他
・SNSの運用に力を入れるようになり、売り上げが上がった(東京都/アジア料理/6~10店舗)
・以前は上司の指示に従うのが基本でしたが、Z世代の従業員をきっかけに個々に考えさせて行動、実践させることが増えて、業績が向上することがあった。しかし逆に悪くなることもあった(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
・労働環境を変えた。髪型自由、化粧・ピアスなどの装飾品OKとスタッフに対して寛容に対応している。それによって離職が減ったのと新規雇用応募が増えた(東京都/バー/1店舗)
Z世代の従業員に対し「世代間ギャップを感じた」は、81.1%
次に、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員との間に、世代間ギャップを感じた経験があるか尋ねたところ、81.1%もの人が「ある」(とてもある=35.8%、ややある=45.3%)と回答。Z世代の従業員が在籍していた店舗の多くが、世代間ギャップを少なからず感じていることがわかりました。
そこで、「世代間ギャップを感じた経験がある」(「とてもある」、「ややある」)と回答した方に、具体的なエピソードを答えてもらいました。以下にその一部を抜粋します。
仕事よりプライベートを優先する
・歓迎会や懇親会に誘ったところ、プライベートを優先したいと断られた。シフトへの協力態勢が以前より弱く感じる(東京都/焼肉/3~5店舗)
・ガッツリ働いて稼ぐ傾向が減り、程よく働いてプライベート優先が多い(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
・退社時刻になると、状況に関わらず引き継ぎ無しで帰宅してしまう(兵庫県/ラーメン/1店舗)
缶切りや栓抜きなどの使い方を知らない
・缶切り、栓抜きを使ったことがない(東京都/洋食/1店舗)
・コーラなどの瓶の開け方を知らない(神奈川県/専門料理/2店舗)
電話での受け答えが苦手
・電話(口頭)での報連相が苦手(愛知県/専門料理/3~5店舗)
・電話での連絡を嫌い、LINE等のツールで行う(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・電話の出方がわからないので、基本的に電話には出ない。出たとしても「ちょっと待ってください」と言って保留もせずに受話器を渡してくる(埼玉県/カフェ/1店舗)
仕事に対する責任感が弱い
・バイトに対する考え方。楽をしようとする、きついことはしたくない、最初からやりたい仕事だけやりたいという若者が多い(神奈川県/カフェ/1店舗)
・仕事を遊び感覚でやっている。遅刻して叱ってもまた遅刻する(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・仕事に対する責任感。当日シフトのキャンセルや、遅刻が多く見受けられる。上記に伴う注意をすると、突然辞めてしまう(東京都/フランス料理/2店舗)
その他
・言われたことはするが、自分から率先して動こうとはしない(愛知県/カフェ/2店舗)
・LINEやSMSで辞めると言って退職する(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
・先輩に対しても敬語を使わない(神奈川県/カフェ/1店舗)
・叱られたり、注意されることに対して苦手な子が多い気がします。伝え方を変えて、極力褒め伸ばしにするよう心がけています(埼玉県/その他/3~5店舗)
また、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員とコミュニケーションを取る際に気を付けていることを質問したところ、「フラットな立場でフレンドリーに接する」との回答が、40.5%で最多となりました。次いで、「仕事へのモチベーションを下げないように配慮する(35.8%)」、「仕事へのモチベーションを上げるように働きかける(34.3%)」との回答が続きました。
さらに、選んだ回答について、具体的な内容を教えてもらったところ、以下のような回答が寄せられました。
フラットな立場でフレンドリーに接する
・プライベートな会話を仕事中にも良く喋らせ、関係性を「友達」寄りにしていく。またフラットな関係を意識し、上下関係からの指示・司令は出さない(東京都/焼肉/1店舗)
・あだ名で呼ぶ。いい部分はフレンドリーに褒める(愛知県/カフェ/2店舗)
・知識・スキルアップの研修をする前に、コミュニケーション系の研修の比重を高め、双方向で人柄をわかったうえで実施するようにしている(神奈川県/イタリア料理/51~100店舗)
仕事へのモチベーションを下げないように配慮する
・難しいこと、キツいことは一緒にやるようにしている(東京都/イタリア料理/1店舗)
・注意する時は注意するが、そのあとのフォローを必ず入れるように気をつけている(大阪府/イタリア料理/1店舗)
・極力強い言動は避け、楽しく働ける環境づくりを心がけています(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
仕事へのモチベーションを上げるように働きかける
・本人の性格を見抜き、適材適所での作業に従事してもらっていた(東京都/ラーメン/1店舗)
・否定ではなく肯定することを意識しながら注意をする(神奈川県/バー/1店舗)
・できるだけ細かいことでも褒めるように心がける。休みを希望してきた時に理由を聞かない、嫌な顔をしない(大阪府/そば・うどん/1店舗)
Z世代にこそ「任せたいタスクがある」飲食店は50.2%。SNS運用に期待の声も
続いて、Z世代の従業員にこそ任せたいと思う(もしくは任せている)タスクについて尋ねたところ、最多は「特別、任せたいタスクはない」との回答で49.7%でした。一方で、Z世代の活躍に期待を寄せている店舗も多く、「任せたいタスクがあり、すでに任せている」は21.9%、「任せたいタスクがあるが、まだ任せられていない」は28.3%と、約半数が「任せたいタスクがある」と回答しています。
そこで、「任せたいタスクがあり、すでに任せている」、「任せたいタスクはあるが、まだ任せられていない」と回答した方に、どのようなタスクを任せたいのか答えてもらったところ、最も多かったのが「SNS運用によるプロモーションや集客」との回答で60.8%。次いで、「接客・配膳・会計・片づけなどのホール業務(40.3%)」、「店頭店内のメニューボード・POP作成(38.7%)」、「新メニューのアイデア出し・開発(32.0%)」との回答が続きました。
さらに、なぜそのタスクをZ世代に任せたいのか理由を尋ねたところ、ほとんどのタスクにおいて「Z世代ならではの新鮮な発想、価値観を活かしてほしいから」との回答を選択する傾向が目立ちました。こうしたなか、「調理」、「予約受付・問い合わせ対応」、「人材採用・育成」については「今の文化や流行に関する知識を生かしてほしいから」との理由を選ぶ傾向が比較的高く見られました。これは、トレンドをメニューに取り入れたいとの考えや、SNSを活用した予約導線、人材募集のしくみに注目する飲食店が増えてきているためとも推察されます。
最後に、自店舗における現状の課題や悩みについて尋ねたところ、Z世代との関わり方における回答も複数寄せられたためご紹介します。
若い世代の人材不足が深刻
・Z世代を含めて、若手をもっと育てていきたいが、人材が集まらない(兵庫県/和食/6~10店舗)
・若い世代の応募者が無い(兵庫県/ラーメン/1店舗)
Z世代の従業員を含む定着率の低下
・若い子は簡単に辞めやすい(東京都/イタリア料理/2店舗)
・Z世代に関わらず、最近のスタッフのレベルの低下、定着率の低下には本当に困っている。店舗運営を継続するのに、本当に神経をすり減らすので、この先商売を継続すること自体考え直す時期かもしれない(東京都/フランス料理/2店舗)
Z世代の育成に苦慮している
・Z世代を育てるのが困難(大阪府/カフェ/1店舗)
・コロナ禍が3年と長期にわたり、経営状況の悪化から正社員、パート従業員の高齢化が進み、Z世代に対する教育環境が整えられていない(東京都/その他/2店舗)
本調査結果の引用時には、以下のご対応をお願い申し上げます。
・クレジットに、「飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ」と明記ください。
・WEB上で引用いただく際には、「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)へのリンク付与をお願いいたします。
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