飲食店の42.9%が人手不足。賃上げ実施の店舗増えるも、DX化によるマンパワー補填の動きは鈍足

飲食店に特化したリサーチサービス「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)を運営する株式会社シンクロ・フード(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤代真一、東証プライム市場:3963)は、飲食店ドットコム会員を対象に、飲食店における人材確保の現状についてアンケート調査を実施いたしました。
  • 本調査について
調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:415
調査期間:2023年1月26日~2023年2月2日
調査方法:インターネット調査

回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち69.4%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は50.1%(首都圏の飲食店の割合は66.2%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
 
  • 調査結果について
飲食店の4割超で人手が足りず。うち84.3%が「アルバイト・パート」不足

アフターコロナを見据えた動きが広がるなか、飲食業界の人手不足が深刻化しています。飲食業界ではコロナ禍以前から人手不足が大きな問題となっていますが、客足が回復するなかで、ますます人材確保の重要性が高まりつつあります。そこで今回は、飲食店における人材確保の現状を調査するため、アンケートを実施しました。

はじめに、自店舗で働く従業員の数が足りているか尋ねたところ、42.9%が「不足している」(やや不足している=31.8%、とても不足している=11.1%)と回答。4割を超える飲食店が人手不足に陥っている状況が明らかとなりました。対して、6割近くの店舗が「足りている(57.1%)」と回答していますが、その内訳を見ると、「充分足りている」との回答は23.4%で、残りの33.7%は「何とか足りている」状況です。多くの飲食店が、余裕のない人的リソースで運営していることがわかります。

続いて、従業員数が「やや不足している」、「とても不足している」と回答した方に、特に従業員が足りていない雇用形態・職種・時間帯をそれぞれ答えてもらいました。まず、足りていない雇用形態について尋ねたところ、「アルバイト・パート」が51.7%、「正社員」が15.7%、「アルバイト・パートと正社員の両方」が32.6%という結果になりました。特に「アルバイト・パート」の人手不足が深刻で、84.3%もの店舗が「アルバイト・パート」が足りていないと感じています。

次に、特に従業員が足りていない職種を尋ねたところ、最も多かったのは「接客・配膳・清掃などのホール業務」との回答で65.2%。続く、「調理・仕込みなどのキッチン業務(50.6%)」も半数を超え、ホールとキッチンの人員不足が目立つ結果となりました。店長やマネージャーといった「管理職」が足りていないとの回答は15.2%でした。

さらに、特に従業員数が足りていない時間帯を尋ねた質問では、「土・日・祝日の夕方~夜」との回答が52.8%で最多となりました。続く「平日の夕方~夜(48.3%)」との回答も5割近くあり、曜日を問わずディナータイムの人手不足に悩む店舗が多いと言えます。全体を見ると、平日と土・日・祝日の不足感に大きな差はなく、いずれも「深夜」、「午前~日中」、「夕方~夜」の順で従業員不足が強くなる傾向にあります。


飲食店の3割が求人サイトを利用、賃上げや柔軟なシフトを意識する店舗も

人材確保のために活用している手段やサービスを尋ねたところ、最多は「求人サイト・アプリ(34.5%)」との回答でした。「店頭の張り紙(30.4%)」、「SNS(26.0%)」、「求人誌・フリーペーパー(21.7%)」などの回答も目立っており、アナログからデジタルまで幅広い手法が使われている印象です。また半数近くの店舗で、2つ以上の手段やサービスを組み合わせていることも明らかとなりました。

さらに、特に人材確保に役立っている手段やサービスを答えてもらったところ、「特に役立っているものはない(32.3%)」との回答が最多となりましたが、これは前問で「従業員を募集していない」と回答した方の影響が大きいと見られます。具体的な手段やサービスを見ると、「求人サイト・アプリ」が22.4%で最多。次いで、「SNS(11.3%)」、「求人誌・フリーペーパー(9.6%)」、「店頭の張り紙(8.4%)」と続きます。

また、活用人数に対し、特に役立つ手段やサービスとして選択した人の割合が最も多かったのが「リファラル採用(※)」です。「リファラル採用」は、実際に活用している人数こそ44人と少ないものの、このうち6割超が特に役立っている手段として選択していることから、今後さらに活用率が高まる可能性も予想されます。
(※)自社や自店舗の従業員から、友人や知人などを紹介・推薦してもらう採用手法のこと

続いて、求人活動を行うときに特に意識していることを尋ねたところ、さまざまな声が寄せられました。

近隣店舗より時給を高く設定
・時給を地域で1番高くする(秋田県/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
・近隣店より時給を高く設定し、応募の間口を広げる(東京都/イタリア料理/51~100店舗)

インセンティブ制度の導入
・頑張った分、きちんと報酬に反映される給料体制(東京都/イタリア料理/1店舗)
・頑張ったら頑張った分だけ給与に反映する(東京都/そば・うどん/2店舗)

賄い(まかない)があることをアピール
・交通費や賄いがしっかりと出るということをアピール(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)
・賄いをアピールして、一人暮らしの学生、フリーターを取り込む(愛知県/和食/1店舗)

融通が利きやすいシフト体制
・曜日や時間帯は毎月自由に選べるようにしています。シフトを組むのは大変ですが、学生の試験直前や家族の予定に合わせる主婦も働きやすいようにしています(東京都/カフェ/2店舗)
・希望のシフトを組むことなど(愛知県/イタリア料理/1店舗)

福利厚生の充実や労働環境の良さ
・福利厚生がしっかりしている(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
・労働環境が整っていること、離職率が低いことをアピールする(東京都/洋食/11~30店舗)
・楽しい現場であること。人間関係の良さ(東京都/専門料理/3~5店舗)

ミスマッチによる退職を減らす
・店の特徴をしっかりアピールしてどんな店かを把握してもらい、イメージと違ったという理由での退職を避ける(東京都/カフェ/1店舗)
・ミスマッチを生まないように、店に来店したことのない方は基本的にお断りする(福井県/洋食/1店舗)

その他
・(求人媒体には)お店の魅力が伝わるような写真をなるべく使うようにしている(神奈川県/バー/1店舗)
・ランチ営業がないことや、駅近、日曜祝日と年末年始のお休みなど、プライベートも充実できることをアピールします(東京都/和食/3~5店舗)
・いいことばかりではなくリアルを伝える(愛知県/その他/6~10店舗)


人手不足のソリューションとなるテクノロジー、64.3%が導入なしと回答

どの程度の雇用期間で募集することが多いか尋ねた質問では、「3か月以上(特に期間を限定しない)」との回答が64.1%で最多となりました。以降、「1か月~3か月未満」が8.4%、「数日~1か月未満」が4.3%、「1日」が1.2%と続き、ほとんどの店舗が3か月以上の雇用期間で募集をかけていることがわかりました。

 

次に、人手不足を補う目的で導入したテクノロジーを答えてもらったところ、64.3%が「特になし」と回答。このことから、人手不足解消を目的としたテクノロジーの導入は、あまり進んでいないと言えます。実際の導入状況を見ても、「食洗機・ロボット掃除機」が17.1%、「予約台帳・予約管理システム」が16.6%、「セルフオーダーシステム」が9.6%と、いずれも1割~2割程度の導入率にとどまっています。

 

最後に、従業員のモチベーションや定着率アップのために行っていること、もしくはやめたことを答えてもらったところ、各店さまざまな工夫を行っている様子が明らかとなりました。

【行っていること】
定期的な面談の実施、こまめなコミュニケーション
・定期的に食事会兼面談を行い、仕事に対しての習熟度合いの確認や給料増などの話し合いを行うようにしている(神奈川県/バー/1店舗)
・とにかくコミュニケーションをとることを大切にしている(石川県/その他/1店舗)

報酬への反映
・能力に応じて期間に関係なく時給を上げている(大阪府/アジア料理/1店舗)
・給与アップ(神奈川県/カフェ/1店舗)

柔軟なシフト対応
・ある程度希望に沿った出勤シフトを毎月決めている(東京都/テイクアウト/2店舗)
・シフトは毎週組んでいるので、予定が立てやすいと好評です(東京都/焼肉/1店舗)

平等な評価制度の導入
・評価シートを用いて平等に評価する(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
・評価すべき点はしっかり評価し、昇給と共に口頭で伝える(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

賄いの充実
・賄いを十分に食べさせ、生ビールも無料で。皆さん喜んでいます(東京都/焼肉/1店舗)
・賄いを手厚く作る。家族の様に接する(東京都/和食/2店舗)

その他
・業務をスタッフにできるだけ任せて、責任感をもたせる(大阪府/カフェ/2店舗)
・夏と冬に寸志を出している(兵庫県/専門料理/1店舗)


【やめたこと】
過度な指示、要求
・以前は非常に細かいマニュアルを作成して、時に箸の上げ下げまで指定するような状態だった。その方が未経験者に寄り添えると思っていたがやめた。現在はある程度の型を説明して都度修正を入れるような教育に変えた(東京都/イタリア料理/51~100店舗)
・適度な距離感を保ち、必要以上に求めない(群馬県/バー/1店舗)

強い指導
・厳しくしない(東京都/フランス料理/1店舗)
・否定しない。ミスを咎めない(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

レクリエーションや歓迎会
・以前はレクリエーションや他店の視察ツアーなどもやっていたが、プライベートを優先する者が増えてきたため、やめた(愛知県/和食/1店舗)
・モチベーションアップのために、以前は会費無しで歓迎会や新忘年会を実施していた。バイトはすぐにやめる場合もあるので、歓迎会をやめた(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

その他
・無理にシフトに入るのをお願いしない(東京都/専門料理/1店舗)
・良い人材が欲しいため、広告業者を使わない事にした(東京都/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)

調査結果の引用時のお願い
本調査結果の引用時には、以下のご対応をお願い申し上げます。
・クレジットに、「飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ」と明記ください。
・WEB上で引用いただく際には、「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)へのリンク付与をお願いいたします。


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本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。
株式会社シンクロ・フード  広報ブランディング戦略室:今西 大木
住所:東京都渋谷区恵比寿南一丁目7番8号 恵比寿サウスワン3階
TEL:03-5768-9522 Mail:public-relations@synchro-food.co.jp
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